2010年、Jadusableという名の投稿者が、古いゲームカートリッジで起きた異変を一人称で報告した。投稿に添えられた動画には、通常と違うゲーム画面が映る。これが「BEN Drowned」の入口だった。映像は残っている。しかし、画面で語られる怪異や「Ben」の死は、作品内の出来事である。

確認できる記録と、物語の中身

確認できるのは、Alex Hall(Jadusable)が制作したネット怪談と、作者のチャンネルに残る2010年の動画だ。デジタルゲーム研究誌の論文は、2010年9月に掲示板へ投稿された五つの文章と動画を組み合わせた作品として扱っている。一方、憑依したカートリッジや実際に溺れた子どもを示す独立した記録は、この作品の根拠として提示されていない。

作者Hallは後年のインタビューで、最初の章と動画を自ら作り、怪しいゲームを手に入れた人物になりきって投稿したと説明した。画面の異変についても、ゲームのデバッグ用コードと動画編集を用いた制作過程を語っている。「証拠映像」は事件の証拠ではなく、読む人を物語に招く仕掛けだった。

消えた原本より、残った形式を見る

匿名掲示板の元スレッドを、投稿当時の状態のまま全面的に照合できる保存記録は今回確認できなかった。後年の転載だけから、個々の投稿の正確な表示順や反応を断定しない。代わりに、作者の公開動画、本人の制作証言、研究論文を突き合わせると、文章と映像が互いを「本物らしく」見せる仕組みが見えてくる。

この話は、未発見の実在事件を追うロストメディアではない。創作の一部として作られた動画が現存し、原投稿の保存には空白がある。その違いを記録することが、この作品を怖がるための足場にもなる。

出典と確度

創作と確認できるもの:作者本人が制作を説明し、2010年公開の動画が残る。未確認:元掲示板の全投稿を当時の状態で示す完全な原本。物語内の設定:憑依やBenの死を実在事件として扱わない。
Arcade Attack / Alex Hallへのインタビュー Jadusable / BEN.wmv(作者公開動画) Crawford / Glitch Horror(DiGRA, 2018)